2021年12月31日金曜日
【DE STENTOR】インタビュー:ファン・デン・ベルフ
オランダメディア DE STENTOR による、ファン・デン・ベルフのインタビュー。
元記事はコチラ ⇒ Eén stap terug brengt de Zwolse voetballer Sepp van den Berg (20) juist dichter bij zijn Liverpool-droom.
マージー河畔の港湾地域リバプールのロイヤル・アルバート・ドックを歩いていると、この街を有名にしたバンドの名前が頭に浮かぶ。ザ・ビートルズだ。
セップ・ファン・デン・ベルフが生まれたのはバンド解散から30年以上経ってから。だが、数百メートル離れたピアヘッドで銅像となったビートルズの音楽を彼はもちろん知っている。
Yesterday、Help!、She Loves You、Hey Jude、Penny Laneといった4人が世界を席巻した曲について話し始めると彼はこう言う。
『良い曲だよね。良い感じ。』
しかし、彼がポップミュージックに最大の影響を与えたとされるバンドの大ファンだとか、ポール・マッカトニー、リンゴ・スター、ジョージ・ハリスン、ジョン・レノンら4人の世界に浸るために観光客が雨風の中でも列をなすミュージアムを頻繁に訪れるというわけでもない。
2001年にズウォレで生まれた彼は、それを体験するには若すぎる。
もちろん、そのためにリバプールに来たわけではない。
赤毛のDFが望んでいるのは、2019年夏に自身をズウォレから€200万で獲得したイングランドのトップクラブ、レッズのスタメンに入ること。
『それが俺の夢なんだ。』
そのためには何でもする。
例えば、ビートルズが1967年に歌ったストロベリー・フィールドにほど近いウールトンの自宅の冷蔵庫の中身は果物と野菜だけ。トレーニング後はできるだけ休息、無茶なことはしない。最後にディスコの中に入ったのがいつかさえ覚えていない。
すべては成功のためであり、気晴らしの場所はないのだ。
理に適っているようで、難しい。加入当時17歳だった彼は正直に打ち明けた。
『最初の数週間で気づいた。大変だったよ。特に孤独が辛かった。でも、何をしに来たんだ?ズウォレでは周りに恵まれていた。両親、兄妹、ガールフレンド、友人、フットボール。それなのに突然遠い国で1人なった。』
最も寂しかったことは?
『直接会えなかったこと。Face Timeで連絡を取ったし、プレイステーションで弟や友人とも遊んだ。でも、直接会うこととは違うんだ。もちろん、クラブは良くしてくれた。』
『フィルジル・ファン・ダイクはドレッシングルームで隣に座るように言ってくれたり、アダム・ララーナは洋服を選ぶのを手伝ってくれたり。』
『でも、フットボールを離れたところでそういった選手たちと一緒に過ごしたり、世界的には無名な少年としてモハメド・サラーやサディオ・マネのような世界的な選手と話したり、簡単じゃなかったよ。それも難しかった。』
孤独を感じ、居心地の悪さも長くあった。どうやって乗り越えたの?
『今までしなかったこと、つまり自分の気持ちを表現すること。絶対に忘れられない。母とFace Timeで話をしていて、様子を聞かれて急に感情が溢れてしまった。ほっとしたよ。その瞬間から、自分の気持ちをもっと話そうということになった。それが凄く大きな助けになった。』
ピッチでも効果は表れた?
『間違いなく。もっとうまくいくようになった。』
リバプールもそれを見ている。
クロップはオランダ世代別代表選手の成長に満足しており、2019年10月のアーセナルとのカップ戦で初先発。チケットが売り切れるような大舞台でプレーすることがどのような気分なのかは考えるまでもない。もちろん最高だ。
そして、それを勝ち取った。
若くしてリバプールへ行ったことを後悔していない。一度もない。彼が辛い思いをしているときでも後悔はない。
『リバプールのようなクラブにノーとは言えないよ。』
それに異議を唱える人もいるが、さほど気にしていない。
『みんなそれぞれの意見がある。でも、素晴らしいステップだと考えている。もし断っていたら?また2年後にオファーがあるなんて誰が言った?同じ金額で?怪我をしたり、調子を崩すかもしれない。今だから言えるけど、リバプールは戻ってこなかっただろう。』
弟であるズウォレのDFラフ・ファン・デン・ベルフより2歳年上の彼は現実的なことを言っている。
初日からファーストチームでプレーすることが難しいと分かっている。
トレント・アレクサンダー=アーノルド、アンドリュー・ロバートソン、フィルジル・ファン・ダイクといったライバルたちとの差はあまりにも大きい。しかし、それも決して悪いことではないという。
『まだ若いから、今が自分の頂点なんだ。月並みだけど、一流の選手と一緒に練習するだけで凄くうまくなるんだ。』
アクションの速さ、パス、すべてにおいて格段に良くなっている。この1年で肉体的にかなり強くなったように。
『ズウォレ時代の写真を見ると自分でも笑えないくらいだ。当時は筋肉質でタフな男だと思っていたんだ。今と比べたら大したことないね。』
インタビューのために川沿いのイタリアンレストランの1つに入った時、すぐに気付いた。ジェリー&ザ・ペースメーカーズによる誰もが鳥肌が立つような歌。
You'll Never Walk Alone.
そしてドアを開けて入ってきたのは少年ではなく男だった。大人として、説得力があり強くなった。
2008年にCSV'28でアマチュアとしてキャリアをスタートしたファン・デン・ベルフは人間としても成長した。
『以前は凄く内向的な性格で、ほとんど人に話しかけることもなかった。でも今は違うよ。社交的になった。』
英語が堪能になった影響もある。
『母からはリバプールの訛りも入っていると言われるんだ。』
だが、彼は分かっている。できる限り強度が高いリーグで試合に出なければいけない。
『リバプールU-23の試合に出ていた。良いことなんだけど、一番良いのはトップリーグの試合に出ることだ。』
ファーストチームでの出場機会は叶わず、自らローン移籍を望んでチャンピオンシップのプレストン・ノースエンドを選択。
会ってから1日と経たないうちに選択の理由が明らかになった。
チャンピオンシップの中で上位を争うわけではないが、風が強く凍えるような午後にホームに首位フラムを迎えてテンポ良くプレーした姿こそ、2024年まで契約を結ぶリバプールの主力たちに割って入るために必要なもの。
アーセナルやマンチェスター・シティではなく、ボーンマス、スウォンジー・シティ、ダービー・カウンティが対戦相手の新しい冒険を後退だとはまったく思っていない。
『そうだね、リーグのレベルで言えば一歩後退している。しかし、イングランドのフットボールで経験を積みたい選手にとっては理想的な環境だと思う。』
闘うフットボールの経験だけが理由ではない。
『このリーグでは週に3回試合をこなす。信じてほしい、悪いことではない。今季は2ゴールを挙げているし、ヨング・オランイェ(オランダ世代別代表)の中心選手になれた。』
シーズン終了後はリバプールに戻る。どんな気持ちだろう?
『良い感じだ。このまま成長すれば、本当のチャンスを自分自身に与えられるだろう。』
ある種のプレッシャーになる?
『それはないよ。まだ若いし、時間はたくさんある。でも、それはスピードを落とす理由にはならない。リバプールでのプレーはずっと夢見てきたことだし、その機会を最大限に活用したい。そうすれば、キャリアの最後に「そうだ、やれることは全部やったんだ」と言える。』
キャリアを終えるまでに実現したいことは?
『夢はリバプールでの定位置確保とオランダ代表だね。さらに言えば、フィルジル・ファン・ダイクを超える存在になりたい。ハードルは高いけど、常に夢は大きく持たないと。』
もしも失敗したら、どう振り返る?
『ダメだったとは思わないよ。リバプールのファーストチームでプレーする機会を得たし、満員のアンフィールドを経験できた。カタールでのクラブワールドカップやスーパーカップを制覇したチームのメンバーだったんだから。』
『たくさん素晴らしいものを見てきた。でも、もっと良いこともあるんだ。プレミアリーグでのプレーとプレミアリーグ優勝だ。』
でも、それを達成できるのは一握りの選手ということも分かっている。
『だからこそ、存分に楽しまないといけないし俺はそうする。もし何らかの理由でうまくいかなかったとしても構わない。自分を責める必要はないって分かっているから。』
『料理の腕もかなり上がった。ズウォレにいたら、そんなことは絶対になかった。母は毎晩料理を作ってくれて洗濯もしてくれただろう。でも、それもだんだん上手にできるようになった。ただ、ちょっと、洗濯カゴに入れっぱなしにし過ぎなんだけどね。』
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