リバプールファンなら皆が好きであろうフィルミーノのチャント『Si Señor』。
とりあえず和訳するとこんな感じだろうけど、スペイン語の Si Señor は Yes, Sir のような意味であり、日本語で表そうとするとなかなかにうまくまとまらなくて、そのままに。
There's something that the kop wants you to know/KOPが皆に知ってほしいことがある
The best in the world his name is Bobby Firmino/世界最高、その名はボビー・フィルミーノ
Our number nine/我々のNo.9
Give him the ball and he'll score everytime/ボールを渡せば必ず決めてくれる
Si Señor/シ・セニョール
Pass the ball to Bobby and he'll score/ボビーに渡せ、彼なら決めてくれる
成り立ち
では、そもそも最初に歌い始めたのは誰なのか、どんな経緯なのかと調べたところ、ベン・スティーヴンソンなる人物のページを発見。
スティーヴンソン氏曰く、Si Señor の原型となるチャントが生まれたのは、2018年11月にベオグラードで行われたCLのツルヴェナ・ズヴェズダ戦の前のこと。
同氏と仲間がベオグラードのスカダルリヤにあるカサブランカというバーを訪れると、偶然にもそこはベオグラードのリバプール・サポーターズ・クラブが観戦をする場所で、チャントの演奏も行われていたものの1時間のうちに Poor Scouser Tommy が4回、しかも少しずつ違うバージョンという単調さで、耐えきれなくなった若者数人がボーイ・ジョージのカルチャークラブのヒット曲『カーマ・カメレオン』のサビの部分でフィルミーノのチャントを作ろうとした。
Bobby,Bobby,Bobby,Bobby,Firmino.
He scores a goal, He scores a goal.
カーマ・カメレオンを知っている方なら、意外としっくりくるから歌ってみてほしい。
同氏は以前から考えていた『我々の9番にボールを渡せば必ず決めてくれる』というフレーズをSNSで出回っていたリーベルプレートファンの Si Señor のリズムに乗せ、フィルミーノの母国ブラジルで話されているポルトガル語に合わせて Sim Senhor と歌い始め、仲間と共に歌詞を付け足していく。
時折リズムが合っているかを仲間と確認し、試行錯誤しながらついに完成させた Sim Senhor だが、何とベオグラードでの実際の試合中には全く注目されず、加えて過激なことで知られるツルヴェナ・ズヴェズダサポーターの圧に押されながらスタジアムを後に。
試合後もファンフォーラムで何の歌かを問う質問があったくらいでなかなか注目は集まらず、ましてやリーグ戦で注目されることもなかったが、続くパリでのPSG戦で全てが変わる。
予期せぬ盛り上がり
ボス・ナイトの盛り上がりをよそに、自身の仲間やベオグラードで知り合った若者しか歌わない Sim Senhor はアウェイゲームに向かう車の中くらいでしか歌われないのだと諦め、食事のためにレストランへ向かおうとする。
しかし、そこに突然現れた若いファンの1人が『インスタグラムに載せてほしい』と言い始め、仲間の2人が広場に残って歌い続け、同氏らはその場を離れる。
そして1時間後、仲間のインスタグラムのライブには、何と広場のほとんどのファンたちが『Si Senõr』と歌いながら飛び跳ねる姿が。
レストランから戻った時も宴は続いており、歌詞はうろ覚えでテンポも狂っていたが、パリの街に響き渡る様子がSNSで拡散されると、瞬く間にたくさんの反響が殺到。
スティーヴンソン氏は自らの初歩的なミスとして、自分たちの動画を残さなかったことを挙げたが、パリのバーで試合前夜に撮影した動画が1つだけYouTubeに残っている。
最初にベオグラードのバーで作成したバージョンは失われつつあるが、音節に合わせて歌詞を変え、歌いやすいようにリズムを変え、今やファンの1番のお気に入りと言っても過言ではないチャントが誕生した。
その後はラグマフィンズというローカル・バンドが収録バージョンを作成し、その収益は全てフードバンクの支援に使われるなど反響は止まらず。
ワンダ・メトロポリターノでのCL決勝でも歌われ、同氏はCL優勝の7ヶ月前にベオグラードのバーで雨に濡れながら始まった歌が、6回目のヨーロッパ制覇の代名詞になると誰が思っただろうと締め括っている。
リーベルプレート
フィルミーノは過去に Si Señor について、『最高だよ』と称賛した上で、こうコメント。
リズムは少しラテンのようで、ラ・ボンボネーラのような感じ。
凄くモチベーションが高まるよ。ピッチの上にいる者にとって、ファンが自分たちの名前やチャントを歌ってくれるのは良いことだ。
ピッチでベストを尽くし、チームを助けるためのモチベーションになる。
フィルミーノが挙げたラ・ボンボネーラはアルゼンチンのボカ・ジュニアーズの本拠地であるが、この Si Señor 発祥の地もアルゼンチン。
最初に歌われたのがボカ・ジュニアーズであるという説やサン・ロレンソであるという説もあるが、一般的に有名なのはリーベルプレートのサポーターによるもの。
1990年にアルゼンチンの歌手フィト・パエスが発表した『Y dale alegría a mi corazón』という歌の替え歌であり、タイトルを直訳するなら『そして、私の心に喜びを』といったところ。
リーベルプレートのサポーターたちは歌い出しの『Y dale alegría, alegría a mi corazón』をそのまま引用して歌い始める。
Y Dale alegría, alegría mi corazón/私の心に喜び、喜びを
La Copa Libertadores es mi obsesión/コパ・リベルタドーレスは譲れない
Copamos Belo Horizonte y Asunción/ベロ・オリゾンテからアスンシオンを征服し
Bostero vos lo miras por televisión/ボカ・ジュニアーズはそれをテレビで見る
¿Qué vas a hacer?/どうするつもりだ?
Si vos no tenes los huevos de River Plate/リーベルプレートのような度胸がないのなら
¡Y si señor!/シ・セニョール
De la mano del Muñeco vamo' a Japón/ムニェコに導かれ日本へ行こう
コパ・リベルタドーレスを制したリーベルプレートがブラジルのベロ・オリゾンテからパラグアイのアスンシオンまで南米大陸を征服し、最大のライバルであるボカ・ジュニアーズはその躍進をテレビで見るしかない。
リーベルプレートのような度胸がないなら、どうするんだ?
ムニェコ(現役時代に長く所属し、監督として2022年まで率いていたマルセロ・ガジャルド監督の愛称)の手で日本へ向かうぞ!と。
熱量、一体感、圧力ともにイングランドとはまた違う迫力があり、アルゼンチン国内のファンはもちろん、国外のフットボールファンからも世界最高のチャントの1つと評されている。
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